
ボートレースの醍醐味といえばスタートしてから1周1マークの攻防。さらに道中の競り合いなどを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。そして戦いはスタートしてから、あるいは12秒針が回転し進入してからであるとして、映像もそこから見る方も多いと思います。
しかしボートレースはそれだけではありません。1つのレースを丸々楽しむためにはピットアウトしてから進入するまでの待機行動をしっかりと見ることが必要です。しかし、初心者どころか何年も舟券を買っているファンでさえも待機行動で何をしているか、どんなルールであるか、といった、ところを説明できる方は多くありません。この記事では、そんなピットアウトからスタートまでの静かな攻防「待機行動」と「進入」について説明していきたいと思います。
待機行動について
レース開始時刻になるとファンファーレが流れ、各選手一斉にピットアウトするわけですが、待機行動とは、このピットアウトからスタートするまでのことをいい、進入などのコース取りも含まれます。 ボートレースでは必ずしも1号艇から順番にスタートコースに入るわけではないため、そういった駆け引きがこの待機行動中におこなわれます。
進入とは
進入とは、狙っているコースを獲得するために主張しあい、待機行動でスタートコースを確定させることです。イン寄りのコースを主張しあう艇が複数あった場合には、スタートラインまでの助走距離が短くなる、俗にいう「深イン」になりやすく、ダッシュ勢が有利になる場合も多くなります。
また助走距離を長くとり、ダッシュスタートをする艇の最内の艇を「カド」といい、ボートレースでは3対3になることが多いことから、4コースの艇がカドになることが多いです。カドは最初にまくりや、まくり差しを放つことの多い有利なポジションで、展開予想をする上では注目すべき艇となります。
前付けとは
前付けとは、待機行動でコース取りの攻防の際、外枠の艇が大きく回り込んでほかの艇の前につけ、インコースを取ろうとする戦法です。前づけでインコースを取ると、スタートラインに向かう時の助走はどうしても短くなり、スタートが難しくなります。
前付けを良くする前付け選手のことを「イン屋」と呼んだりもします。
西島義則、江口晁生、今村暢孝、深川真二、石川真二、鈴木幸夫、村上純、上瀧和則など
また、これとは逆に、コース取りの際にあえてアウトコース(6コース)を取ろうとする選手も稀におり、そういった選手は逆にアウト屋と呼ばれています。
待機行動のルール
待機行動のルールは、簡単に言うと以下の2つになります。
- 時間稼ぎで浅い進入はしない
- 他の人に迷惑はかけない
① 時間稼ぎで浅い進入はしない
ボートレースは前にいる舟の引き波がなく、ブイを締めて1周1マークを全速力のターンが出来れば基本的には追いつくことができません。だからこそインは強くなっています。ここに加えて助走距離をしっかりとり、スピードの乗った状態でスタートされてしまっては格段にインは強くなってしまいます。そのため内側であるなら多少のリスクを背負ってもらおうというのがこのルールです。主に覚えておきたいものとしては以下の3つです。
A 適正な間隔
B 右転舵
C ターンマーク等への接触
Aについては決まりがない場合、ピットアウト後にバック側でも大回りをして進入を遅らせればインも十分な助走距離を取ることができてしまいます(例外と間隔の詳細は後ほど)。同様にBも右側にハンドルを切ればその分小回りの必要がなくなってしまうため時間稼ぎが可能となってしまいます。(例外として、バック側に出てから適正な間隔の位置に戻るためにする1度限りは認められる。)Cのターンマーク等への接触は、極端な話インの選手がターンマークを持って前に進まないようにすれば常に150mから起こせるといった事態もなりかねません。これら3つによって、インは150は切ったスロー域でのスタートとなります。
② 他の人に迷惑はかけない
主なものとしては下の2つが挙げられるかと思います。
D 割り込み
E 舟同士の接触
こちらは他の人の邪魔をしないでねということですが、進入前からの接触は激しい前付けとそれへの抵抗以外ではなかなか珍しいかもしれません。となると割り込みですがこちらは「A 適正な間隔」の詳細のときにどのタイミングで起こるか登場していますので、そちらをご覧頂きたいと思います。
このように待機行動では、インや内側が有利になりすぎないようにルールが決まっており、適正な間隔(バック・2マーク側が2艇身ずつ、ホーム側が3艇身ずつ)といった間隔、ダッシュ勢にもズルができない仕組みを作っています。
待機行動違反の罰則
待機行動ルールを破った場合、待機行動違反となるわけですが、この場合当然罰則があります。
事故点-2点が加算されます。事故点は、選手がスタート事故や反則を起こした場合に加算される点数です。
事故点・事故率についてはこちら
事故点が増えると当然、事故率(事故点÷出走数)も高くなり、事故率が0.70を超えると次期はB2への降格となります。
待機行動違反を複数回繰り返した場合は、即日帰郷の対象にもなりえます。
なお、違反があってもレースにおいて失格や返還等はありません。
前付けがある場合
ここからは更に前付けのあったときについて考えていきます。前付けがあると内側で抵抗したい選手は、もし適正な間隔を遵守した上でホーム側に舳先を向けてしまうと、そこから先のスタートまでの時間に舟はどんどんとスタートに近づいてしまい、50m起こしということも起きてしまいます。そうなると前づけ自体する選手もいなくなってしまうでしょう。
そこで、通常時は2艇身という間隔を取らなければならないというバック側と2マーク側ですが、中高速のときだけは例外として間隔を開けることが認められています。(ただしホーム側の3.6.9艇身は適用。)
さらに、前付けに抵抗した内の選手は、ホーム側で内から3艇身ほどの位置でスタート方向に舳先は向いていますが、150mの確定するラインよりはだいぶ後ろにいることがほとんどです。このとき2マークギリギリのとこに他の艇が1コース進入として150m見通し線を最初に入ることも可能性です。もちろんその時は起こし位置がかなり深めとはなってしまいます。
これら前付けがあった場合はバック側と2マーク側の取るべき間隔が適用されないという面が大きな特徴です。
またレアなパターンとして、割り込みに見えるがルール内での動きもある事が稀に起きるというのも覚えておくと、進入が変わるレースでも待機行動から楽しめるかもしれません。
進入について
ここからはコースが決まってからの進入について。進入は待機行動でも紹介のように内側から3艇身ずつの間隔に入るように定められています。ダッシュ勢は12秒あたりから、スロー勢は9秒あたりからレバーを握りこみ、スタートの0秒に向けてスピードを乗せています。
レーサーはスタンド側の200m.100m.85m.45m.5mの看板や85m.45m.5mの空中線(旗)と大時計を見比べて練習通りのタイミングの合ったスタートを本番レースでも目標にしています。フライングを切らないことはもちろんですが、最もスピードが乗り切った状態で他艇より早くスタートすることを心がけており、そのため選手それぞれが自分の目標としやすいものとタイミングで進入しています。スタンドから観戦の際には最高のスタートを切れるよう、光るものや反射するものを持たないのはファンの務めかもしれません。
進入の見どころは選手それぞれの起こし方や体を揺さぶり方とビジュアル面でもお楽しみ頂けますが、やはりレースに直結する内容が気になりますよね。それは基本のタイミング通りの進入ができているかどうか。5秒前に100m、4秒前に85m、2秒前に45mというように一応の目安があるようで、これより早ければスタートでアジャストする可能性もあり、遅れていれば凹む可能性を考えなければなりません。
覚えておきたい進入固定レース
企画レースとして各地にある進入固定競走ですが、企画レースとして一般競走やG3で主に西のいくつかの場でおこなわれています。
ルールはスロー3艇、ダッシュ3艇の3対3の進入で、スロー勢は150mの見通し線を入ること。ホーム側の適正な間隔をとることです。よって待機行動でも全艇が大回りして待機水面を流しています。インコースの選手がゆったりと進入できることから、逃げの確率は通常より高くなっている場合が多いです。
中でも徳山1Rでは調べた日から直近30レース全てが1号艇の勝利と、とてつもない連勝記録を残しています。