名古屋地方裁判所は2日、西川昌希被告に懲役4年と追徴金3725万円を求刑しました。
西川昌希 元選手とは
西川昌希 元選手は昨年9月末に突然引退届けを提出しました。優勝回数は10年で12回。デビュー4年目から常にA級キープとその腕は確かなものがありました。引退直前のヤングダービーでは6枠からインを取り逃げるなど、若手には珍しく内より思考の選手で注目度は高い選手でした。
当初は「持病の腰痛と体調不良」により引退との話もありましたが、あるレース映像が出回るとたちまち八百長による引退との声があがりました。
疑惑のレース
昨年7月2日、琵琶湖で行われたイースタンヤング最終日でのこと。7レースに登場した西川氏は1周2マークで3番手。2周1マークには1周目で転覆した艇がありました。多くの皆さんがご存知の通り、転覆した艇のそばでは追い抜きは禁止。さらに(ほとんどの場合)外を大きくゆっくり回るというルールになっています。
2周1マークに差し掛かった西川氏は前の2艇同様に減速をしましたが、その減速は異常というほどの減速。後ろの艇も追い抜きができないため、大減速で渋滞のような状態に。そのままスタンド側のギリギリを超低速で走ったため、4番手の選手が3番手に浮上。結果として西川氏は4着となりました。明らかに着順を落とそうとしていたと見られる動きから、八百長ではないかという声が多く上がりました。
逮捕
今年1月8日、西川氏はモーターボート競走法違反(競走の公正を害する行為および収賄)の疑いで名古屋地検特捜部に逮捕されました。
同日、西川氏の親族の男も贈賄の疑いで逮捕されています。これを受けて日本モーターボート競走会の潮田政明会長は同月15日に記者会見を開き、再発防止に努めると陳謝しました。
再逮捕
1月28日には先の逮捕時の該当レース以外において18レースて不正が行われ、計3425万の贈収賄があったとして8日に逮捕された2人について再逮捕をしました。
これについては最大20日という勾留期間の延長策として20日後に再逮捕になったと考えられます。(1回目の逮捕の時点ですでに複数回の贈収賄があったことが調査でわかっていた可能性が高いと思われます)
初公判
3月19日に初公判が行われました。冒頭陳述で検察側は2016年2月ごろに西川氏が親族の男に八百長を持ちかけたと指摘し、起訴状によると19年1月から9月に11場で計20回の八百長をし、現金3725万を授受したとされています。
疑問がわくとしたら、持ちかけてから対象のレースまでの間が広く開いていることですね。口座等を通していないため記録の残っていない金銭の授受はもしかしたらそれ以前からあったかもしれませんね。
9月2日の裁判
9月2日には名古屋地方裁判所で上記についての裁判が行われました。裁判で検察側は西川被告に対し「自ら犯行を持ちかけ利益を不当に得た上、税務申告をせずにギャンブルに使い果たした」として懲役4年、追徴金3725万を求刑しました。一方、弁護側は執行猶予付き判決を求めています。
ここで少し難しい内容となるかもしれませんが、今回の問題について法律の話もします。西川被告の罪に該当するのは「モーターボート競走法 第二十九条 (前略)選手が、その職務又は競走に関して、賄ろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。」となっています。しかし、西川被告への求刑は4年と追徴金。この答えは2項と3項にありました。
- 2項 前項に規定する者が、その職務又は競走に関して、賄ろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束し、よつて不正の行為をなし、又はなすべき行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。
- 3項 前二項の場合において、収受した賄ろは、没収する。もし、その全部又は一部を没収することができない場合には、その価額を追徴する。
1項にあたる部分になかった「不正の行為を」という部分が今回の西川被告に該当すると思われます。よってより重い最大5年の条文が適用され、加えて不当に受け取り使い果たした額を追徴される求刑となっているようです。
この事件についての判決はおよそ1ヶ月半後の10月21日となっています。西川被告はもちろんこのようなことは初犯でありますし、西川被告と親族の男も共に罪を認めている点から執行猶予付きの判決となるのではないかと考えられます。
しかし、不当に得た利益については到底許せるものではありません。もっと言えば西川被告によって損を被ったファンがいる可能性も十分にあり、返して欲しい方もいらっしゃることでしょう。今回のことを機に持ち物検査等が厳しくなったとの話もありますし、善意で減速を行ったはずの女子レーサーが1年の出場停止となった例(⇒別リンク)もありました。
ボートレースをはじめとして公営競技は公正であることが前提に楽しめる競技です。現在の選手たちを信じてファンである我々は応援していきたいところです。