飛躍と成長の2022年。”水上の黒帯少女”野田彩加の現在地と次なる道

2022年12月12日 11時15分 「文/マサト」

 

「15歳でデビューを果たした史上最年少ボートレーサー」

デビュー当時はそうした注目を集めることが多かった。しかし、いかなる若手でもそういった話題性は初年まで。どんなレーサーでもその後の活躍がなければ見向きもされないのが、厳しくもプロの世界だ。

 

だが、わたしが彼女を注目していたのは決して話題性や見た目だけではない。
レースから見て取れる「気持ちの強さ」。それこそが野田彩加から解き放たれていた眩さだった。

もうすぐそこまできている4年目という時期を前に、今一度彼女のこの2022年を振り返りたい。

目に見えるターン技術の成長と勝利数アップ

惜しいレースが続きながらも待望の初勝利を挙げた2021年、そこから飛躍を見せて2022年は5つの勝ち星を記録した。

特に1月には難水面としてお馴染みのボートレース江戸川で2勝をマーク。この節間は4枠(4コース)が4回、5枠(5コース)が2回、6枠(6コース)が3回という中で2~3着に絡むシーンも多く、今年を振り返る中では最も印象に残る節間となった。

5月に入ると3節連続の勝利を挙げ、今年前半の充実ぶりをしっかりとみせてくれた。この活躍にはターン技術の向上が大きく関係していると言えるだろう。

そして8月以降はデビュー以来では初めてとなるスロー域でのレースの番組も増えて行き、11月10日のオールレディース競走レディース笹川杯の7Rでは初の1コースを任されることにもなった。

「インだからと言って緊張することはないですよ。でも、2枠の細川(裕子)さんにジカまくられたりしないですかね? 6枠の山川(美由紀)さんの前付けはありますよね?」「ピット離れと、スタートがしっかり行ければ大丈夫ですよね。でもフライングだけは気を付けないと」と某スポーツ誌のインタビューに高揚感と緊張を見せたコメントをしていたのは記憶に新しい。

しかし残念だったのは、初イン戦が前期のF2休みを残した状態で臨まなくてはいけなくなってしまったこと。Fを重ねられないことからダッシュ戦で見せるようなキレキレのスタートとは対照的な0.56という凹んだスタートとなり、インタビューで危惧していた隣枠の細川裕子に捲られることとなった。しかしこれはこれで経験。今後に向けてこれをイメージ材料に次またおとずれるイン戦で良い走りができるのなら何も問題はない。

ひとつ気になったのは、このインタビューの際に語っていた「今節からインにも入ろうと思ってます」というコメント。今までダッシュ戦が中心だったのは本人の意向も多少含まれていたのか?それとも言葉のアヤなのか?この辺が今後本人の口から語られるときがあるのであれば注目しておきたい。

足止めをするフライング禍

江戸川で勢いがついてきた前期、そして3節連続勝利で流れが向いた後期と1本のフライングがいずれも内容を狂わせていってしまった。

2022年の全5勝を振り返るといずれもFが0本時の勝利であり、1本でもFを切ってしまうとその後勝ち星が上がることなく期がを終えてしまうという傾向にあった。Fがなければ4カドから0.0台で超ギリギリの踏み込みを見せてスロー勢に襲いかかるようなレースを演出してくれるわけだが、やはりFを抱えてしまうとそうもいかずSTは0.2台以降に落ち込んでしまう。4~6コースでも2、3着と舟券に絡むシーンがあるだけに、本人としてもここはもどかしいところだっただろう。

そして後期は8月以降にスロー域のレースが増え、スタートの難しさに苦しむ中で10月14日の痛恨の今期2本目のフライング。これにより更に追い込まれる形となってしまった。加えて、ここでF3となればもちろんのこと事故パン(事故率オーバー)状態にもなるため当然慎重なレースをせざるを得なくなり、期末の最終節は6日間全て6コースから慎重に回るしかない状態で終えることとなった。

こうなってしまうと初の1コースデビューの負けも致し方ないものだったと言える。事故率、フライングがリセットされたとはいえ、前期60日の休みを残した状況での新期の初めての1コース戦で、絶好のスタートを決めろというのはあまりにも酷だ。

とはいえ、デビューして数年のフライングというのはトップレーサーになるための大事な経験過程でもあり、Fを恐れて思い切りの良さが消えてしまっては野田彩加の強みも消えてしまう。今ではFを滅多にしない平山智加も、SGレーサーとなった遠藤エミでさえ、デビューして数年はFをよく重ねていた。つまりこれは避けては通れない経験。これをしっかり糧にし、次に活かすことで新たな道は必ず開ける。

スロー戦の克服と冬の厳しい戦い

60日のフライング休みを明けた2023年の初戦は、すでに平和島の「ボートレース平和島劇場開設13周年記念」の斡旋が決まっている。

Fが無くなればまた鋭い走りが期待できる一方で、冬の季節はどこのボートレース場も温水パイプを導入するためダッシュでの伸びを欠きがち。もしそうなる様なら得意のパターンに持ち込み切れない可能性は十分にある。しかし、今後はスローコースでのレースも恐らく増えてくる。ここがカギだ。

このスローでのレースが増えるというのが上手くハマれば、内になれば内になるほど有利なボートレースでは当然勝ち星を大きく増やしていくきっかけになる。現状はダッシュとスローのスタートの違いに戸惑い躊躇するシーンもあるため、そこがまず2023年最初の目標となりそうだ。

更にこれまで徹底的に外枠でのレースを強いられてきただけに、ペラやモーターの整備はスローからのレースを意識して調整してきたはずだ。そうなると、整備の方法を見直すケースも出てくるかもしれない。もしそのあたりの調整の難しさに戸惑うようなことがあるなら、一時的にダッシュでの成績を落とすことももちろんあるだろう。しかしこれを乗り越えればダッシュでもスローでも自在に戦える選手へと成長することはたしかで、その後は勝ち星を量産できる道筋ができるはずだ。

更に野田彩加を後押しする材料で言うなら、選手として人気があるという点ももちろんカギとなってくる。レディースオールスターでも中間で10位台にランクインし注目度の高さは証明済み。「野田彩加がイン戦になるなら応援して買いたい」という番組マンの意向がどんな形であれ味方をするなら勝ちやすい番組も増えていく。もちろんそれを生かすも殺すも本人次第となってはしまうが、ボートレースは決して与えられる環境が均等ではないため、そういった環境化で与えられるものもチャンスとしてぜひとも掴み取ってほしいところだ。

レディースオールスターへの初参加

60日間の休みが明けてからすぐに迎えることになるG2レディースオールスターにファン投票で中間19位にランクインを果たした。

最終結果でどのような形になるかはわからないが、現在の票数的にみても初のG2以上のタイトルレースへの出場権利はほぼ確定したと見ていいだろう。

レディースオールスターはG2ではあるが若手女子選手が多く出てくる上にスタートが甘い選手がスローコースで意図的に番組に組まれやすい。このようなレースにこれまで培ってきたダッシュ戦で配置をされるようなら、武器でもあるキレキレのスタートから強気に踏み込んだ一発が決まるといった場面も出てくる。そうなればG2水神祭を挙げることも決して難しくはない。

そして6日間のどこかで組まれる可能性のある1コースでの番組でも、普段なかなか戦う事が出来ないA1級トップクラスの女子レーサーを相手にすることとなる。このようなレースで逃げ切りを決めて大金星を挙げるのももちろん大事だが、上述の通り何か得ることで先に繋げられたらそれはそれで1人のファンとしても嬉しく思う。

1節間の中で得た様々な事が2023年の野田彩加の活躍に繋がる何かになるのであればそれもまた楽しみなところだ(38位でボディコンパフォーマンスをすることは既に無さそうである中間順位なのは、本人にとっても朗報か否か…)

飛翔・野田彩加の次のステージ

2022年も1年間に渡り『野田彩加』を追いかけ続けたが、あっという間に一年が終わりを告げようとしている。

果たして来年はどんな成長を見せてくれるだろうか。スローコースでの番組の多さと、そこに対応する力がそれを大きく分ける勝負の4年目となることは間違いないだろう。

ルックスや発言の愛くるしさから人気度も高いが、わたしが『野田彩加』に一番魅了されているのは、やはりその『強い気持ち』と『負けない心』が表れるレースそのものなのだ。

山口支部は現在、超売れ出し中の清水愛海を筆頭に次世代の若手女子選手の台頭が期待されている。しかし、今はまさしく自分との戦い。周りよりもまず己に打ち勝つ局面にきていると言えるだろう。ファンの声や期待に応えたい気持ちも当然ながら、今はたとえセルフィッシュになってでも、自分との闘いを全うすることが真・野田彩加へ突き進む最短の近道になるはずだ。

今や女子トップレーサーである小野生奈も、デビューから初勝利までに1年半を要し、初優出までに3年2か月かかった。さらに初優勝までは5年かかっている。トップをゆく先輩レーサーもまたそういった苦難を乗り越えてきていることを考えると、回り道もなんのその。握ってまくっていけばいつかは先頭に立つのがボートレースだ。そう、あくまでも「わたしはわたしらしく」。そんな志で2023年は更なる飛翔の年となっていく姿を目にしたい。

まずは2023年の初戦。わたしは『野田彩加』の舟券を握りしめ、そのスタートを見届けよう。

 

2022年12月12日 11時15分 「文/マサト」

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