JRAストライキ【公営競技におけるストライキを紐解く】

ＪＲＡの厩務員、調教助手らが加盟する主要４労組（関東労・全馬労・関西労・美駒労）が、１０日に日本調教師会とＪＲＡに対して開催ストライキ通告を行っている。

JRAは、2011年の大幅な売上減少によって新賃金体系に変更。それ以降の約11年間、厩務員や調教助手の賃金はコストカットされていた。

しかしながら、翌年以降売り上げは上昇を続け、少なからずここ数年は明らかな黒字傾向。であるにも関わらず、新賃金体系から旧賃金体系に戻る事はなく、４労組は今月10日、現在の賃金体系の廃止を日本調教師会に求めた。

第２回団体交渉が16日、午後3時半から都内で行われたが、それでも妥結には至らなかった。これにより、交渉は翌日以降に持ち越されるわけだが、このまま交渉が決裂し続けることとなれば、今週末の18日・19日に開催予定の競馬が開催中止となる可能性も十分あり得る事態だ。もし開催中止となれば、1999年4月3日以来、24年ぶりの開催中止となり、春のGⅠ戦線を控えたトライアル重賞も控えていることからSNSでも大きく話題となっている。

ボートレースにおいてもストライキは過去にあった。とはいえ情報の発達が著しい近年に起きたわけではなく昭和に起きた内容で、はっきりとした文献があるわけではない。そのなかでも情報を収集し2つの事例を確認したため紹介したい。

1つ目は1973年の宮島で長期にわたって行われた。原因の詳細は不明だが従業員のストライキだ。1973年（昭和48年）11月10日〜1974年（昭和49年）5月22日まで193日間の休催となり、施設修繕などを除いては最長の休催ではないかと考えられる。なお長期間の休催へのファンへのお詫びと感謝の意を込めて毎年行われているのが岩田杯である。一般戦でありながら記念クラスのメンバーが多く出場し、さらに優勝賞金も現在の一般戦は74万円以上なのだが、このシリーズでは2023年のもので200万円とG2までは及ばないにしても高い賞金となっている。宮島の名物シリーズにはかつてストライキがあったことが関係していた。

2つ目は未確認情報となっているが、1987年の桐生でストライキ寸前までの自体になったようだ。これは整備不良によって帰郷となったと見られる地元選手2名について施行者はうやむやに（整備不良であると出場停止となる場合があり、その後の売上に影響を与えるため別の理由で帰郷に）したかったという情報を入手。しかし、これに対し遠征勢の選手は納得がいかず、出場選手全員が出場をボイコットして帰ると施行者側と揉めたという情報がある。これに関しては正式にボイコットしたのか否かは調べても出てこなかった。ここで感じるのは隠蔽（いんぺい）体質であるのは昭和・平成・令和と時代が変わっても、競艇からボートレースとなっても変わっていないように感じる。

近年においてボート界では事実の公表を行う透明性に疑問を投げかける様々な声がある。特にファンとしてはもちろんのこと、選手にも影響する事項は今後の改善点となるだろう。八百長問題や持続化給付金の受給では一部選手の名前のみが公表され、その他大勢の選手については未だに名が伏せられている。受給問題については自らSNS等で謝罪する選手もいたが、その他の選手が実際に出場停止となっていたのか、あるいは他の事情によって出場をやめていたのかは不明で我々の憶測によって不快に感じた選手もいただろう。その点では無関係の選手を守る意味で判明した該当選手を公表する必要があったのではないか。

またレースの裁量についても不透明極まりない。アクシデント時の優先艇や航走指示などに加えて「優勝戦でのやり得」とも言われる待機行動違反や追い抜き不良などファンも選手も納得いかない裁量となることはしばしば発生している。これらを明確にするためにも着順確定前に審議を行うことこそ公平公正を貫くためには必要不可欠であり、レース完走後であっても失格や降着という事態は必要であるだろう。このような点が積もりつもっていけばボートレース界においても大規模なストライキは発生しかねない。

過去に発生したボートレースでのストライキは主催者である企業や地方公共団体との間で行われており、全選手が一斉に行われたものは確認されなかった。今回の中央競馬で行われると言われてるストライキはあらゆる厩舎の厩務員がJRAを相手取って行うという構図。ボートレース宮島と従業員との規模に比べると大きく異なる。

ボート界では年々賞金も高まり、グレードレースも続々と新しいものが生まれているだけに選手と施行者や競走会の間で金銭面でのトラブルから起こるストライキは現在のところ考えにくいだろう。ただし「透明性」を追求した運営をしていかなくては遠からず同様の騒動は起こりかねない。対岸の火事とすることなく今ボートレースに何が欠如しているのかを見直すきっかけになることを祈っている。

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