ボートレーサーの最低体重制限とは
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ボートレースでは「最低体重制限」が設定されており、男性レーサーは52kg、女性は47kgを下回ってはいけないルールとなっている。

※この規定は令和2年11月1日に改定
【最低体重基準値】
男子選手 現行:51.0kg 適用後:52.0kg
女子選手 現行:47.0kg 適用後:47.0kg
男女差 現行:4.0kg 適用後:5.0kg

最低体重制限の本質

ボートレースはご存知のとおり浮力のあるボートにモーターを取り付けて進んでいますが、全く同じモーターを使用したとしても選手の体重によっては直線の最高速に影響を与えます。かつてのボートレースでは、最低体重が設定されておらず、SGや地元周年の出場に際して少しでもトップスピードをあげようと前検の段階から1食も摂らず、水分すらも最小限に抑えサウナで極限まで減量したという話もよくあったほどです。しかし、これでは選手の健康状態やレースでの事故など生命にも関わるものと見直され、施行されたのが『最低体重制限』です。これにより、選手たちは出場シリーズに向けてこの最低体重に体重を近づける調整をして臨む事が多く、SGなどトップ選手が集う大会では52.0〜52.2kgといった体重調整をしてくる選手も少なくありません。

最低体重制限における減量や増量の課題

減量課題の例

倉持莉々

この最低体重への調整は身長の高い選手や体質によって課題ともなっています。

2023年2月のレディースオールスターでドリーム戦にも出場した倉持莉々選手は、ボートレーサー養成所に入所する際に減量が引き金となり病気となってしまいました。悪性リンパ腫、俗に言うガンです。入院した日は本来であればボートレーサー養成所に入所する日であり自身の誕生日でもありました。しかし気持ちを折ることなく倉持選手は治療し、1年半後に再び養成所を受験し合格。見事にボートレーサーとなりました。デビュー当時から女子選手の最低体重は47.0kgですが、倉持選手のデビュー戦は53.2kgとボートレーサーとしては少々重めの部類に入ってしまいます(167cmあるため一般人からしたらかなり細身であると思います)が、現在では得意とする料理で体重管理を行っています。レース場では朝はバナナとゼリー、昼は食べずに夜はサラダ、納豆、味噌汁と徹底しているようです。そんな効果もあって現在は48kg台での出場も増えています。体調に気をつけつつ頑張ってほしいですね。

来田衣織

最近、話題に上がってきたのは来田衣織選手の話題。1/23に来田選手は自身のTwitterで師匠てある魚谷智之選手から体重に関してのミッションが与えられたと報告がありました。その内容は「今期中(〜4/30)までに47kg台に乗らないと破門されるというガチ減量計画」ということでした。SG3勝の偉大な師匠から試練を与えられた来田選手。ツイート前の最終走1/15の段階では52.2kgで、1/17出場の魚谷智之選手が51.0kg。やはり女子選手というメリットを生かすためにも体重管理は重要ということでの試練でしょう。

ここから来田選手は

1/25 51.1kg
1/30 50.7kg

2/15 50.2kg
2/20 49.8kg

3/9 51.0kg
3/13 49.4kg

と3節それぞれで節間の減量にも成功。3/9の51kgにヒヤリとしましたがそこからの減量は見事でした。次回4/8からの福岡まで間は開きますが、緊張感を維持し続けられるのか注目です。

増量課題の例

樋口由加里

最低体重制限によって体重調整が必要になるのはなにも減量だけではありません。体質などによって増量や体重調整を行うオレンジベストを着用しなくてはならない選手たちもいます。有名なところだと昨年のボートレースクラシックを制した遠藤エミ選手は常に45kgほどで出場。そのため2kgの重量調整を行っていることがほとんどです。

また、樋口由加里選手にいたっては増量かベストの着用について苦悩しています。樋口由加里選手は2008年5月デビュー。これまでA1級を6期、A級を16期務める岡山の代表的女子選手です。1年2ヶ月の産休から2022年3月に復帰。今期はA2級に復帰しています。記録の残る2013年3月の最初の出走で樋口選手は44kgで出場。最低体重が47kgなので3kgの重量調整を行って出走していました。元々小柄なタイプで、養成所に入所する時期には40kg少々という樋口選手。ちなみに養成所で持っての移動を行うモーターも重さは約40kg。まるで自分を抱えて動くような訓練だったでしょう。樋口選手のように最低体重に足らなくても重量調整をすればいいというほど単純なことではありません。ファンの方でも例えば冬にダウンを着てポケットにお財布やスマートフォン、飲み物などを入れると非常に動きにくくないでしょうか?コンマ何秒の間に判断をして繊細な操作が要求されるターンにとってやはり邪魔となる重りは出来るだけない方がいいでしょう。樋口選手の場合、無理に体重を47kgまで近づける努力をしましたがそれも自身の動きに違和感を感じたため、自分の体重と重量調整のバランスをとって出場するようになったそうです。現在では45+2kgや45.5+1.5kgといった形で出場する事が多くなっています。

今村豊

元選手ではありますが、増量で引退を決意した選手もいます。昨年のグランプリ覇者・白井英治選手の師匠でもあった今村豊 元選手がその例です。

今村豊選手は2020年10月8日に電撃引退を発表。この中で2020年3月より51→52kgに引き上げられた最低体重が引退の理由の1つとして挙げていました。元々増量しにくい体重の今村さんは無理にでも食べたりして体重を51kgに維持しようとしていましたが、1kgという更に自らの体に負担となる増量を必要となるのを厳しいと判断。引退を決意するほど増量が大きく左右するほど、選手によっては死活問題とも言える問題にもなりうるということです。SGやG1でも活躍してきた選手にとって重量調整のベストを着用する事自体、やはり違和感もあるかと思います。また、重さは合っていても自分の身体ではない以上、思うように動かないというジレンマも抱えていたのかもしれません。時代は変わり体格もいい選手が増えて多くの男子選手がありがたく感じる最低体重の変更。これがボート界の偉大な選手の引退を決意させる一因になるとは予想だにしなかったでしょう。それだけ選手の体重とベストの着用は繊細なものということを改めて感じました。

 

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